お茶の産地へ行くと、茶畑にある電柱の先端に大きな扇風機が付いている光景を目にすることがあると思います。
静岡県内を東海道新幹線や東名を利用していると嫌でも目に入ってきますね(^^;)
この扇風機の名前は防霜ファン
今回はなぜ茶畑に扇風機(防霜ファン)を設置しているのか?
防霜ファンの役割などを解説いしていきたいと思います!
ちなみに牧之原台地のような広大な茶園では、ずら~と防霜ファンが設置されている光景を見ることが出来ます。
お茶の産地ならではの光景ではないでしょうか。
防霜ファンを動かす季節は…?
この防霜ファン(扇風機)は、一番茶萌芽から収穫前にかけて動かします。具体的には、3月の上中旬から4月中ですね。
なぜこの季節に動かすのか?というと…
お茶の新芽を霜から守るためです!
4月になっても朝晩は気温が下がります。
場合によっては氷点下ほどになることもあり『霜』が降りることがあるのです。
お茶の新芽はこの『霜』に弱く、完全に凍ってしまった場合は芽が枯れてしまうことがあります(>_<)
もし、この写真のように真っ白になるほどの霜が降りてしまうと、お茶の芽が全滅してしまうことがあります。
(冬の間であれば、新芽がキチンと守られているため全く問題ないです)
冬の間のお茶の新芽は、いわばコートを着ている状態…。
しかし春になると芽を伸ばし始めるため、邪魔なコートを脱ぎ棄て薄着の状態になります。
防寒対策が不十分なので霜や寒さの影響を受けてしまうのです。
・お茶の芽がコートを脱いで生長し始める季節
・霜が降りる季節
この2つの条件が重なっているのが3月上中旬から4月にかけてになります。
伸びている新芽が霜によるダメージを受けると収穫出来なくなってしまうため、防霜ファンを動かし新芽を霜から守るのです!
防霜ファンの仕組みとは…?
防霜ファンは簡単に言えば大きな扇風機です。
羽が回ることで風を送り首振りもします。
そのため、動き方は扇風機と全く同じです。
茶畑の中に電柱を立て、地表から5mほど上に設置されています。
地表ではなく上に設置するのにも理由があり、ファンの動きと設置場所が霜を防ぐ仕組みに大きく影響しているのです。
(下にある緑の四角がお茶の樹、右側の電柱とその上に付いている3枚の羽がある物が防霜ファンです)
気温が低くなると、空気全体が冷えるようなイメージがあります。
しかし地表から数メートル上は、地表付近よりも空気が暖かい状態になっています!
これを『逆転層(ぎゃくてんそう)』と言います。
霜が降りる日は、茶畑の表面付近は氷点下近くなるのですが、5m上空では2℃・3℃ほど気温が高くなっています。
この上空(5m)の暖かい空気を、扇風機で地表へ向かって風を送ることで、地表の気温を高めることが出来ます!
これが、防霜ファンによって霜を防ぐ基本的な仕組みです。
風を発生させる
防霜ファンの霜を防ぐ基本的な仕組みは上空の暖かい空気を地表へ送ることですが、もう1つ霜を防ぐ仕組みがあります。(こちらは、あまり話に上がることはないですね…)
霜が降りる日は『気温が低く、風のない快晴の日』です。
放射冷却が発生しやすい日と言えます。
逆に気温が高かったり、曇りや雨の日、風のある日は霜が降りません!
気温を高くすること・雲を発生させるのは困難ですが、防霜ファンを設置することで風は発生させることが出来ます(^^)/
風を発生させることにより霜を防ぐ効果もあるのです。
稼働シーンは激レア?
静岡県内の茶畑では、どこでも防霜ファンが設置されているのを見ることが出来ます。
しかし防霜ファンが動いているシーン、稼働シーンは地元民でない限りなかなか見ることが出来ないと思います。
まず防霜ファンを稼働させる季節は3月上中旬から4月中にかけての約1か月半ほど。
1年間の内、1か月半しか動かしていないのです。
また、この稼働させる期間中であっても動いている時間は限られています。
霜を防ぐ目的で動かすのでもちろん日中は動いていません!
時間帯で言えば、深夜から朝にかけてのみです。
さらに、動かすために気温などを設定しています。
気温が高い日は霜が降りないため動かす意味がありません。
霜が降りる危険性のある気温以下になったら動くように設定しているため、動くかどうかはその日の天気や気温次第です。
稼働させる期間と時間帯、そして気温。
この3つの条件が全てそろった時に稼働するため、なかなか動いているシーンを見ることが出来ないのです。
最後に
防霜ファンはお茶を安定的に栽培するためには欠かせない機械の1つです。
稼働させるために使用する消費電力は大きく、機械を維持していくためにもコストはかかります。
しかし、寒暖差の大きい山間部では特に霜が降りるリスクが高いため、安定的にお茶を生産するためには必要不可欠(>_<)
新芽が伸びる時期にたった一度でも霜が降りてしまうと、枯れてしまい収穫が出来なくなってしまいます。
もし収穫する事が出来たとしても芽の伸びは極端に悪くなりますし、作られたお茶の品質も正直に言って悪いです。
一番茶(新茶)シーズンは最も重要な収穫期になりますが、たった一晩・たった数時間の霜の影響で全てがダメになる可能性もあるので4月頃の霜は非常に怖い一面があります。
防霜ファンがあっても被害を全く受け無くなる訳ではありませんが、ファンがあると霜による影響を受ける可能性を大幅に低くすることが出来るため、安定的にお茶を作るためには欠かせない機械になるのです!