日々お茶暮らし  茶農家のブログ

川根地域でお茶づくりをしている農家のブログです

抹茶の話 ~2020年新茶へ向けた話 番外編~

2020年新茶へ向けた話…。

今回は番外編!!

『抹茶』に関して投稿させて頂きます。

 

近年は抹茶味のアイスやお菓子などをよく目にするようになりましたね(^^♪

私自身も、抹茶系のアイスを度々購入し食べています!

 

そのためお茶業界は煎茶などの生産量は縮小傾向でしたが、近年の抹茶人気により抹茶(碾茶)は拡大傾向にあるのです…。

(最近は頭打ち傾向になってきましたが…)

 

製茶機械メーカーさんも碾茶を作るための機械を開発!

碾茶工場」も続々と建設されたようです。

 

また静岡県の研究でも、碾茶の製造に関するものが盛んになったりしていますね!

 

そんな茶業界の話もありますが、実は『抹茶』はお茶をただ粉にしたものでは無いのです!

栽培方法・製造方法に特徴のある『碾茶:てんちゃ』というお茶を石臼で挽いた物が抹茶と呼ばれるお茶になります。

 

茶葉を粉にしただけの物は「粉末茶」になり、抹茶とは呼ばないのです!

 

そこで今回は、抹茶の話として原料となる『碾茶』について投稿していきます!

 

 

日を遮って栽培

抹茶の原料となる『碾茶』ですが、まずは栽培方法に特徴があります。

 

一般的なお茶はお日さまの光を当てながら栽培をしていきます!

 

しかし碾茶は、芽が伸びていく時期から収穫までの一定期間お日さまの光を遮って栽培を行うのです。

このような栽培方法を『被覆(ひふく)栽培』と言いますね(^^)/

 

ちなみに被覆栽培は、碾茶だけではなく「玉露」の栽培でも行われます。

被覆して育てたお茶の葉を、煎茶と同じ加工方法でお茶にすれば『玉露』になりますし、碾茶の加工方法で加工すれば『碾茶』となるのです。

 

また碾茶玉露よりも被覆期間を短くして、煎茶に加工した『かぶせ茶』というお茶もあります。

 

お日さまの光を遮って育てるのには資材も手間もかかりますが、メリットがもちろんあります!

 

一つ目は

うま味が強いお茶になる

ことです。

 

お茶のうま味成分はお日さまの光を浴びると、苦み成分や渋味成分に少しずつ変化してしまう特徴を持っています。

 

しかし、お日さまの光を遮ることで変化するのを防ぐことが出来るため、うま味を強く感じるお茶にすることが出来るのです!

 

玉露や抹茶で強いうま味を感じるのは、お日さまの光を遮って育てたからになります。

 

二つ目のメリットは

濃い緑色の葉に育つ

ことになります。

 

お日さまの光を遮るため、収穫する芽や葉の色は濃い緑色になります。

光合成を行えるように葉緑素をたくさん増やすため、濃い緑色の葉になるのです!

 

お日さまの元で育てた新芽が黄緑色の芽になるのに対して、被覆した芽は本当に濃い緑色になります(^^♪

 

抹茶の深い緑色は、お日さまの光を遮って育てたことで、茶葉が濃い緑色に育つからなのです!

 

逆にデメリットもあります…。

お日さまの光を一定期間遮ってしまうためお茶の樹が疲弊しやすくなってしまいます。

 

そのため肥料を少し多めにあげたり、病害虫の管理をしっかりと行う必要があるのです。

 

 

揉まずに乾かす加工方法

抹茶の原料となる碾茶は、栽培方法だけでなく加工方法にも特徴があります。

 

ほとんどのお茶は力を加えて揉み込みながら乾かして加工します。

対して碾茶の加工は、一切揉む工程が無いのです。

 

収穫した生葉はサッと蒸して冷却…。

その後は『碾茶:てんちゃろ』という独特の機械で熱を加えて乾かしていきます。

 

碾茶炉から出たお茶はもう一段階乾燥させ、カッターなどで葉を細かくしふるい分けします。

これでようやく碾茶が完成するのです!

 

そして完成した碾茶を抹茶工場などで石臼で挽き粉にすることで抹茶となります。

 

ほとんどのお茶は揉み込んで加工するため、一切揉む工程がない碾茶の加工方法は独特だと言えますね(^^♪

 

 

加工用抹茶(碾茶)が大幅に増産

先ほど、

「近年の抹茶人気により碾茶の生産が増加した」

と言いましたが、実はお点前用の抹茶に関しては減少傾向なのです(>_<)

 

増えているのはお菓子などに使用されることを前提とした加工用の抹茶…。

 

同じ種類のお茶ですが、両者には圧倒的な品質の違いがあります。

お日さまの光を遮る方法も、お点前用の碾茶では棚を茶畑の上に作り日を遮るのですが、加工用の碾茶ではお茶の樹に直接光を遮る資材を被せて育てる方法が一般的です。

 

またお点前用の碾茶では、一年に1回の収穫としているのが大半のようですが…

加工用の碾茶では一年に2回・3回と収穫することがあります。初夏のお茶ではなく、秋冬番茶(秋のお茶)を碾茶として育て加工することもありますね。

 

加工用の抹茶は

・抹茶という名称が使えること

・色が良いこと

・値段が安いこと

などが求められます。

 

そのため品質が少し低くなることがあります。

ちゃんとしたお点前用の抹茶を飲んでみると、品質の圧倒的な違いにとても驚きますね(^^)/

 

以前、京都の宇治で自然仕立ての抹茶を飲ませて頂いたことがあるのですが、その時感じた味の衝撃は今でもよく覚えています。

 

またいつの日か抹茶を購入しに宇治へ行きたいですね…。

 

 

ちなみに、現在中国でも抹茶(碾茶)の生産が拡大傾向となっています。

「品質の悪い抹茶が出回るのでは…」

との声もあるのですが、日本国内でも悪質な抹茶を販売している業者もゼロではありません…。

 

非常に残念な事です(>_<)

 

最近は抹茶の消費量も頭打ちになってきているため、品質が著しく劣るお茶を生産・販売する業者が無くなることを願います。

 

 

まとめ

抹茶とは、一定期間お日さまの光を遮り育てた茶葉を揉まずに乾かした『碾茶』を粉にしたお茶になります。

お茶をただ粉にしただけでは『抹茶』とはならないので注意してください。

 

近年の抹茶ブームによりお菓子などに利用する”加工用碾茶(抹茶)”の生産が拡大しました。

ただ、お点前用の抹茶は減少傾向にあります。

 

品質に関しては圧倒的にお点前用の抹茶の方が高いので、機会がありましたら飲んでみることをおすすめします!