日々お茶暮らし  茶農家のブログ

川根地域でお茶づくりをしている農家のブログです

茶の樹の品種

農産物にはたくさんの品種があります。

 

お米だと、”コシヒカリ”や”ひとめぼれ”

あきたこまち” ”ななつぼし”などなど…。

 

ブドウでは”巨峰” ”ピオーネ”

”シャインマスカット”など

品種名を目にする機会もあると思いますし

名前自体を知っている方も多いと思います!

 

しかしお茶ではどうでしょうか・・・

 

少なくともお米や果樹ほど

品種名が前面に出てくることはないですし

ご存知の方も少ないと思います。

 

今回は茶の樹の品種について投稿しようと思います。

 

早生、中生、晩生

 

茶の品種の特性を説明するときに重要となるのが

早晩性(そうばんせい)です。

 

作物の収穫時期によって分けられるのですが

中生(なかて、ちゅうせい)を基準として

中生よりも早い時期に穫れるものが早生(わせ、そうせい)

  〃  遅い時期に穫れるものが晩生(おくて、ばんせい)

の主に三つに分けることができます。

 

お茶は「やぶきた」という品種が

全国で一番多く栽培されています。

 

そのため

「やぶきた」よりも収穫が何日早い、あるいは遅い

というように、中生種として基準にもなっているのです。

 

実際に晩生種の茶の樹は

「やぶきた」よりも遅く芽が成長しますし

早生種ではその逆になります。

早生品種

 

早生品種は温暖かつ霜の害が

少ない地域で多く栽培されています。

 

なぜならば、お茶の芽は霜に弱く

たった一晩で景色がガラッと変わることもあります。

 

早生品種は早く芽が出てくるので

霜が降りない地域でないと被害を受けやすくなるのです。

 

しかし早く穫れるのは経営的には有利です。

なぜかというと、早いほどお茶の値段が高い

傾向になっているからです。

 

といっても霜が降りれば被害は大きくなります。

そのため寒さが厳しい山間部などでは

あまり栽培されていないです。

 

「しゅんめい」「あさつゆ」

などといった名前の品種があります。

 

岡埜谷農園では1a(100㎡)ほどの面積で

「おおいわせ」という名前の早生種を栽培しています。

 

ですがこのお茶は製品にはしていません!!

共同製茶工場で使う機械の掃除用の葉として収穫します。

 

毎年収穫・製造シーズンの前に工場の清掃は行いますが

100%全てのホコリなどを取り切るのは困難です。

 

機械を稼働させればホコリが舞うこともありますし

高い位置をベルトコンベヤーが通っているので

少し残ってしまうこともあると思います。

 

そこでお茶の葉を実際に揉みながら

全ての機械を通すことで

100%キレイな状態にしているのです!

 

品質のいいお茶を作るには重要なことになります。

 

晩生品種

 

晩生品種は早生の逆の特性になります。

 

芽が遅く出てくるので

霜の影響を受ける確率を低くすることができます。

 

「やぶきた」の畑は新芽が成長し

黄緑色が一面に広がっていても

晩生品種の畑はまだ青々としていない

ということもあります。

 

晩生品種には

「おくみどり」「かなやみどり」

などといった品種があります。

 

晩生(おくて)とも読むので

名前に”おく”がついているのでしょうか…。

 

ちなみに晩生品種では

「おくひかり」という品種を

5a(500㎡)ほど栽培しています。

 

この品種を育てている畑では

霜を防ぐ機械が設置されていないため

霜を回避できる晩生品種を取り入れているのです。

 

中生品種

 

中生品種で一番栽培されているのは

「やぶきた」という品種です。

 

やぶきた茶という名前で

お茶が販売されていることもあるため

お茶の品種の中では一番認識されていると思います。

 

品質も高く収量も多い優秀な品種のため

たくさん栽培されているのでしょう。

 

地域や畑によって条件が変わるので一概に言えませんが

「やぶきた」を超える品種は

まだ開発されていないと思っています。

 

そのため岡埜谷農園では

茶の樹の植え替えを行うときは

「やぶきた」を植えます!

 

借りている畑を含めて120a(12,000㎡)ほどの

広さでお茶を栽培しているのですが

1aが早生の「おおいわせ」

5aが晩生の「おくひかり」

残りの114aが「やぶきた」になります。

 

やぶきたの割合は95%にもなります。

 

土地柄

 

平らな土地で同じ品種ばかり栽培していると

収穫時期が一点に集中してしまいます。

 

そのため広い面積で栽培する場合は

早晩性を利用して収穫時期をずらすなど

工夫が必要になります。

 

しかし岡埜谷農園がある川根町・上河内。

上河内では山の斜面に茶畑が広がっています。

 

標高差では200メートルほどはあるでしょう。

 

そのため成長スピードが全ての畑で同じになる

ということはありません。

 

気温差やお日さまの当たりかた…

様々な違いがあるため成長スピードに差が生まれます。

 

そのため同じ品種ばかりでも

収穫のタイミングがばらけるので

問題なく栽培することができるのです。

 

まさに山の茶畑、という土地柄あっての方法です。

 

品種ではなく

 

最初に

「お茶の品種名は前に出てくることがすくない」

と書きましたが何故なのかを考えてみました。

 

お茶は他の農産物と大きく違う特徴があります。

 

お米や果物はそのままの状態で販売されていますね。

しかしお茶は生の葉で販売はされていません!

 

人の手によって加工されて販売されているのです。

 

そのため、地域名や売り手が名付けた名前で

販売されているのでしょう。

 

お酒も同じですよね。

日本酒では酒米、ワインではブドウなど

原料となる農産物には品種名があります。

 

しかし日本酒やワインとなった状態では

商品名が前面に出ている印象を受けます。

 

品種名が載っていたとしても

文字が小さかったり、隅であったりして

パッと一瞬見ただけでは分かりません。

 

お茶も同じです。

いや、お茶はさらに品種名が載っていない

物が多いでしょう。

 

品種名だけでは、お茶の種類やブランドは分かりません!

同じ「やぶきた」でも

加工次第では煎茶にも紅茶にもウーロン茶にもできます。

 

そのため

お茶の場合はお茶の種類や地域名を付けて

販売しているものが多いのだと思います。