日々お茶暮らし  茶農家のブログ

川根地域でお茶づくりをしている農家のブログです

『やぶきた』にまつわる話

お茶の品種の中でもっとも有名であり

最も栽培、製造されている品種である

『やぶきた』

 

『やぶきた』は今年で誕生から110年となります!

 

杉山彦三郎氏

『やぶきた』という品種は

杉山 彦三郎氏が発見、育成した品種です。

 

杉山氏は現在の静岡県静岡市出身で

茶の栽培、製造を仕事とするなか

同時に品種改良にも力を入れていた方です。

 

茶園を造るため藪(やぶ)を切り開き

その茶園の北側で発見、育成されたのが

『やぶきた』という品種!

藪の北で発見されたから”やぶきた”と言うのです(^^)/

 

ちなみに「やぶみなみ」という品種もあったそうですが

この品種は定着しなかったため

現在では「やぶみなみ、という品種もあった」と

話で聞く程度です…。

どのような品種であったのか、とても気にはなります。

 

お茶の品種改良

お茶の樹は基本的に芽や葉を収穫しますが

植物なので花も咲きますし、実も付きます。

 

昔は茶の樹に生った”種”を土に蒔き

お茶の樹を増やしていたのですが

種で増やすと問題が1つ発生します。

それは種、株ごとに特徴が異なることです。

 

葉の品質はもちろん違いますし

大きさや形、色も僅かに異なります。

また、芽を出すスピードや時期もことなります。

隣り合っているお茶の樹でも

片方は早く芽が伸び収穫が行えるのに対し

もう片方は収穫が遅くなってしまう…

ということが起きてしまうのです。

 

そこで同じ特徴を持ったお茶の樹を

増やす方法として行われるようになったのが

「挿し木」です。

 

増やしたいお茶の樹の枝を土に挿すのですが

時期、土などの条件を整えると

一か月から二か月ほどで根っこができます!

 

このような方法を行うと

同じ特徴を持ったお茶の樹を

増やすことができるのです(^^)/

 

つまり今の『やぶきた』という品種は

110年前に杉山氏が作った

一株の『やぶきた』から増やされたもので

この一株がなければ『やぶきた』は

存在していなかったのです。

 

種を蒔き育てたお茶の樹の中から

品質が良いものを選び出し、挿し木で増やす。

大まかですが、現在でもこの方法で

お茶の新しい品種を開発しようと

研究が進められています。

 

最高の品種!

『やぶきた』という品種は

香り、味がとても良く

収穫量もそれなりに採ることができ

栽培も行いやすい最高の品種です!

 

日本全国の茶園面積では約7割ほどを占め

静岡県に限定すると『やぶきた』の面積は

9割以上ほどにもなります。

 

高速道路や新幹線から見える茶畑は

ほぼ『やぶきた』だと言えるでしょう!

 

岡埜谷農園、上河内地域でも

『やぶきた』が最も盛んに栽培されています。

上河内地域の土、気温、

日照などの環境とも相性がよく

香り、味が良いお茶を作る事ができるからです。

 

他の品種を試しに導入したこともあるのですが

上手く育たなかったり、収穫が行えても

『やぶきた』を超える品質のお茶とはならないため

岡埜谷農園では茶畑の95%で

『やぶきた』を育てています。

 

お茶の樹も様々な品種があり、

品種ごとに特徴がありますが野菜や果物と違い

お茶は葉を生のまま食べたりはしません。

 

揉み、熱を加え乾燥させるなどして

人の手によって加工され、初めて消費されます。

そのため品種よりも加工方法、栽培された地域・環境

これらによる違いが、大きな個性を生んでいます。

 

『上河内茶』に最も適した品種は「やぶきた」

そのため上河内地区、そして岡埜谷農園では

この品種が最も盛んに栽培されているのです。

 

今シーズン、お茶の樹の植え替えを行うのですが

今まで栽培していた品種も『やぶきた』で

新しく植える品種も『やぶきた』です。

 

『やぶきた』がなければ、杉山氏がいなければ

”上河内のお茶”を作ることはできません。

杉山氏、『やぶきた』という存在には

本当に感謝あるのみですm(_ _)m