日々お茶暮らし  茶農家のブログ

川根地域でお茶づくりをしている農家のブログです

挿し木って何? 茶の樹の増やし方について

こんにちは!

昨日の夕方から降り始めた雨は、朝には上がりました。しかし、なかなか晴れてきません…。お日さまの姿を見るのには、もう少し時間がかかりそうです。

 

雨が上がった直後は、土の中にたっぷりと水が含まれています。そのような状態で土を掘ったりすると、練ってしまうため、硬い土になることがあります。

 

そのため、本来であれば苗木の植え付けを行っていきたいのですが、ちょっぴり我慢…。

天気が回復し、余分な水分が土から抜けるのを待っています。午後からは、植え付けができるかな…。

 

今回、植え付けを行うお茶の苗木は『挿し木』という方法で、増やされたものです。一般的にお茶の苗木は『挿し木』によって増やされます。

 

種を蒔いて育てる方法は分かりやすいですが、『挿し木』による方法は知っている方も少ないのではないでしょうか?

 

そこで今回は、茶の樹の増やし方を例に『挿し木』について、投稿していきたいと思います。

 

 

枝の一部から苗をつくる

挿し木』とは何なのか?

簡単に説明すると「枝の一部から新しい苗をつくる方法」になります。

 

お茶の苗は、枝からこのような流れで新しい苗ができます。

伸びた枝の一部、茶色くなった茎の部分から葉っぱを付けた状態で、短くカットします。これを『さし穂』と言います。

 

茶の樹の場合は、葉っぱを2枚付けた状態でカットすることが多いですね。枝が長いほど、たくさんの『さし穂』を作ることができます。

 

 

次に、この『さし穂』を土の中に、一定の深さに挿します。土は、挿し木用に様々な種類の土を混ぜ合わせたもの、赤土など水をたっぷりと含むもの、などを使用します。

 

根っこが付いていないので、水が吸収されにくい状態です。お日さまの光が当たると葉っぱの呼吸が激しくなったり、土が乾いてしまう原因となり、場合によっては枯れてしまうこともあります。

 

お日さまの光を遮った状態で管理する必要があるのです。「寒冷紗」という布のようなもので屋根を作り、日陰の状態で根っこが出るのをまちます。

 

また土が乾かないように、さし穂が水を吸収できるように、こまめに水をあげます。

 

 

日陰+こまめな水やり、で管理していくと、土に挿した部分から根が出てきます!

根っこが出てくれば、挿し木は無事成功!土から水を吸収できるようになると、新しい芽も伸びてきます。

 

そして、さらに1年、2年と育てることで、お茶の苗木として植え付けが行える状態になるのです。

 

 

挿し木のメリット

茶の樹をなぜ『挿し木』で増やすのか?それにはちゃんとした理由があります。

 

お茶の樹は『自家不和合成』という性質を持っています。お茶の樹も花が咲き、種ができるのですが、自分の花粉では受粉しないのです!この性質を『自家不和合成』といいます。

 

自分の花粉では受粉しない…。つまり、授粉するためには他の種類の花粉が必要となります。

 

種ができる樹の性質と、花粉の樹の性質が組み合わされた種ができるため、『やぶきた』という種類の茶の樹の種であっても、親と同じ『やぶきた』が育つわけでは無いのです!

 

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お茶の樹の種を蒔くと、いろんな特徴を持った樹が育ちます。葉の色や形…似たものはあっても、同じものはありません。

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種から育てる方法では、それぞれが違った特徴を持つ樹に育つため、一定の品質のお茶を作るのは難しくなります。また、美味しい芽や葉っぱが収穫できる樹に育つとは限りません…。(品種改良をする時には、種から育てて、優秀な品質・特徴を持つ樹を選抜して、新しい品種を作り出します)

 

 

そこでお茶の樹を増やす際には、親と同じ特徴を持った樹を増やせる『挿し木』方法が用いられるのです。

 

 

最後に

今回はお茶の樹の場合を例に、挿し木について書きました。

『挿し木』はお茶の樹だけではなく、果樹などでも使われている技術です。

 

例えば『ぶどう』

ぶどうの樹も、種を蒔いて育てる方法では、親と違った特徴を持った樹に育ってしまいます。そのため『挿し木』によって増やされています。

 

巨峰やピオーネなどのポピュラーな品種、近年人気のシャインマスカットも、元は1本の樹から始まりました。美味しい品種を楽しめるのも『挿し木』技術があるからこそなのです。