近年、野生動物による農作物や林への被害が多くなりつつあります。
統計データーでは「農作物の被害額は減少している」傾向がみられるため、野生動物の被害は減少しているように見えるのですが、あくまでも統計データー上の数値でしかありません。
もちろん、対策などにより被害が減少している地域もあるでしょう…。しかし、まだまだ悩んでいる地域や、被害が深刻化している地域もあります。
あまりにも野生動物の被害が深刻な地域では、農業を止めてしまう事もあります。農作物を作らなければ、そもそも被害も発生しないため、農業を止めてしまう事が被害額が減少している一因にもなっています。
また、被害額は申告しなければ反映されません。統計データーでは見えない、申告されていない被害額や金額に反映できない被害も多いのです。
お茶の栽培でも野生動物の被害を受けることがあります。
ただ、お茶の樹が受ける被害は野菜や果物と違い、収穫する果実を食べられてしまうような被害ではありません。
そのため、被害額を計算するのは困難です。
今回は、お茶の樹が受ける野生動物の被害の1つ…。イノシシによる被害を紹介したいと思います。
ミミズなどを狙って
茶畑の土は、刈り落としたお茶の葉っぱや有機肥料などにより、黒っぽくて微生物がたくさん住んでいます。また、葉っぱなどの有機物をエサにする「ミミズ」などの生物も多いですね!
栄養分だけでなく、生き物も豊富な豊かな土である…と言う事が出来るのですが、「ミミズ」が多いとそれを狙ってやって来る動物が…(>_<)
そう、イノシシです!
イノシシの被害に遭った時は、遠くからでもはっきりと分かります。
この写真のように、お茶の表面がデコボコになるため、「やられた~!」とショックを受けます(-_-;)
土を掘り起こしミミズなどのエサとなる生き物を探すのでしょう…。
お茶の樹の根元付近の土が、ごっそりと掘り起こされている事があります。
掘り起こす際にお茶の樹の根っこが傷付いたり、切られてしまう事もあります。
たくさんの根っこを張り巡らせているため、多少掘り起こされたり切られても生長に悪影響は出ませんが、ショックは大きいですね…。
また、土の表面もデコボコになるため、歩きにくくなります。
歩く際に足を取られる原因になったりするため、このように掘り起こされた時はそのたびに元に戻します。
なかなか手間のかかる作業で、大変です。
手間も時間もかかり、作業量が増えることになりますが、被害を金額として算出できないため、被害額として表れないものになります。
イノシシが土を掘り起こす際に、お茶の樹の枝も跳ね上げてしまう事もあります。
跳ね上げられたお茶の枝も、土を戻す時に一緒に戻します。
しかし、枝に関しては完全に元通りにはなりません。
僅かに表面にデコボコが残ってしまうのです。少し分かりにくいですが、手前側にボコッとなっている部分があります。
このままの状態では、収穫時に古い葉っぱや枝が混入するリスクが高まります。
そのため、新芽が伸び始める前の初春頃に、表面を刈り整える必要が…。一番充実した部分の芽を失ってしまうため、イノシシによる被害はショックが大きいです。
※品質や安全性には全く問題はありません。ご安心ください
イノシシも食べるものを得るために必死なのでしょう…。
茶畑の土には、ミミズなどがたくさんいるため、楽に食べ物を得ることが出来るのだと思います。
また近年は個体数が増加したりして、食べ物が不足することがあるのでしょう…。食べ物を得るために畑や町の方へ出ることも多くなりつつあります。
イノシシも必死なのでしょうが、私たち生産者も必死に農作物を育てています。
大切な農作物を守るために、色々と対策を行います。
上河内地区でも地区内の茶畑を囲うように高さ1mほどの柵を設置しています。ただ、色々と対策をしても完全に防ぎきるのも難しいです(>_<)
農業は自然と関係が深い産業です。自然や環境を守り維持していく必要がありますが、同時に高品質で安全、そしてなるべく安い農産物を生産する必要もあります。
農業のことだけでなく、野生動物の生態なども勉強して、農業と自然・環境の維持を両立する必要があるのです!