日々お茶暮らし  茶農家のブログ

川根地域でお茶づくりをしている農家のブログです

夏の農薬散布 1回目

現在、川根町上河内地区の茶園では、三番茶芽が順調に生長しています。

 

この三番茶も収穫しお茶を作ることはできるのですが、上河内地区では三番茶以降のお茶は作っていません。

 

”価格が安い”という経営面の理由もあるのですが、三番茶の芽を収穫せずにしっかりと光合成をさせ、養分を蓄える期間を作ることで翌年の春に伸びるお茶の品質を少しでも良い物にしようとしているのです(^^)/

 

上河内地区での一番茶(新茶)の収穫は平年で5月上旬。収穫する時期は約9カ月先ですが、夏のお茶の管理、三番茶芽をしっかりと育てることが、品質の良いお茶づくりにとって重要となります。

 

しかし、梅雨から9月頃にかけては害虫や病気が多発してしまう季節です。

 

害虫の多くは、気温が低い時期であれば活動や増殖が抑えられますが、6月頃からの夏の間は活発に動くシーズン…。さらに、害虫の多くは、新しく伸びたお茶の芽を好むため、お茶の新芽が伸びやすい季節とも合致します。

 

また、病気もある程度の気温(25度ほど)があり、湿度が高い状況になると、感染や蔓延しやすくなってしまいます。

 

そのため、お茶の栽培では夏の時期に農薬をかけることが多いです。

※新茶の時期は病気や害虫の被害がないため、新茶に農薬をかけることはほぼありません(地域にもよりますが)川根町上河内地区でも、一番茶(新茶)を対象とした農薬散布は一切行っていません!

 

これからの季節は、来年のお茶の品質を維持するために、安全なお茶を作るために、三番茶芽を対象として2回ほど農薬散布を行います。

 

今回はその1回目です。

 

 

病気の予防と小さな虫からの保護

農薬を2回まく…と言うと、たくさん農薬をまいているように感じるかもしれません。

 

しかし、2回行うのにはちゃんとした理由があるのです。

 

川根町上河内地区では、「ネオニコチノイド農薬」「有機リン系農薬」など多くの害虫に効果があるけど周りの環境への影響も大きい農薬は一切使用していません。このような農薬を使用すれば、一度の農薬散布で効果が得られるため、散布回数を減らすことが出来ると思います。

 

しかし、おかのや農園そして上河内地区では、特定の害虫にしか効果がなく、環境や人への安全性が高い農薬しか使用しません

 

お茶の芽の樹液を吸ってしまうウンカなどにしか効果がない農薬。お茶の葉っぱを食べてしまうイモムシに効果のある農薬…。

特定の害虫にしか効果がないため、お茶の芽の生長状況や害虫の発生状況に合わせて農薬を散布しています!

 

そのため、散布の回数が2回となるのです。

※状況に合わせて散布の回数を減らすこともありますし、多発している年は増やすこともあります。しかし、ほとんどの年で三番茶芽対象の農薬散布は3回以内に抑えています。

 

 

今回使用した農薬は、お茶の芽の樹液を吸ってしまう”ウンカ”や”スリップス”と言われる小さな害虫を対象とした農薬。

お茶の芽の樹液を吸ってしまうため、被害に遭った芽は縮れたような形になったり、色があせたようになってしまいます。これでは、健康的な葉っぱに生長できませんし、光合成にも影響してしまうでしょう…。

 

それと、病気に対して予防効果のある農薬を散布しました。

 

これからの季節は「炭疽病」という、お茶にとって非常に怖い病気が発生しやすくなる季節です。

特に「やぶきた」は、この病気に対して弱いので、しっかりと守ってあげることが重要となります。

 

※やぶきたは病気や害虫に対して弱い特徴がありますが、お茶の香りや味は抜群です!また上河内地区の環境にも適しています。そのため、品質重視のお茶づくりをしている上河内地区では、やぶきたをメインに栽培しているため、病気から守ることが欠かせません。

 

 

欠かせない道具

農薬散布にはもちろん、肥料を葉面散布したり水をまいたりと、色々なシーンで使える道具…。

農家にとって重要な道具の1つが『動力噴霧器』通称「動噴(どうふん)」です。

タンクに入れた農薬などを吸い込み、ある程度の圧力をかけて送り出す機械です。ポンプの様な物だと思ってください!

 

この動噴は、使用シーンに合わせて細かに調整をすることが出来ます。

エンジンの回転数や水を送り出す量を変えることで、散布できる水の量や圧力を細かに調整できるのです。

 

作物の種類や使用する道具に合わせて、設定を多少変えて使用します。

 

 

安全に配慮しながら…

近年開発された農薬は安全にとても配慮されています。

人に対しての影響はもちろん、周りの環境(昆虫や動物)に対しても、優しい農薬が増えてきています。

 

ただ、このような農薬は開発に時間がかかりますし、コストもかかるので少し値段が高いのが辛い所…。しかし、農薬を使用するなら安全で環境に優しい物しか使用したくないので、コストをかけてこのような農薬を選択しています。

 

しかし、いくら安全性の高い農薬、環境や人に対して優しい農薬と言っても、使用方法を間違えることは許されません!

 

しっかりと散布する農薬のことを勉強し、ルールに従って必要最低限の量だけを散布していきます。

(散布する量は10a当たり、250~280Lほどです)

 

暑い日が続いているので、体調に気を付けながら…。

こまめに休憩をしながら行っています。