日々お茶暮らし  茶農家のブログ

川根地域でお茶づくりをしている農家のブログです

様変わりしつつある草場の状況

こんばんは。

今日は午前中を中心に青空が広がったものの、お昼ごろからは黒い雲が広がることもあり今にも雨が降り出しそうな状態となりました。雨は今のところ降ってはいませんが、最近は何とも言えない微妙な天気が続いていますね。

 

ただ気温に関してはここ一週間、最低気温は21℃前後、最高気温は28℃前後という数字的には涼しいものとなっています。9月になったばかりの頃は34℃など猛暑日目前まで気温が上がっていたので、急に下がっているような印象を受けますね。

 

この気温低下は季節が進んでいることによるものなのか一時的なものなのかは分りませんが、出来ることならこのまま季節が進んでほしいものです。

 

食害により様変わり

現在は茶畑周辺の草刈りを進めているのですが、近年爆発的に増えているニホンジカによる影響がじわりじわりと現れています。

まずは単純な食害による生育不良。写真の所はまだ育っている方なのですが、場所によっては草刈りを行うことが出来ないほど生育が抑えられています。

写真の場所も株の大きさは平年と比べても2分の1程度しかありません。

 

これは伸びて来た芽をすぐに食べられてしまうことによるものでしょう。ササユリ、コバキボウシ、ホタルブクロなど一部の植物はシカが増えたのと同時に完全に無くなってしまいました。

これは二つ目の問題にも繋がりますが植物相が変化、多少性の減少が発生しています。茶草場は草刈りを行うことで適度な攪乱が行われ、多様な植物が育つことが出来る環境です。

 

しかしシカが多くの植物を食べるのですがその一方で嫌う一部の植物は残すため、一部の植物ばかりが繁茂するような状況となりつつあるのです。

具体的にはここ2年ほどでワラビがかなり増えています。

写真の場所も本来であれば人の背丈ほどのススキが生えホタルブクロなどの花も見られる場所でしたが、ワラビばかりが繁殖してしまっているのです。

山菜として利用できる植物ではありますが、ワラビばかりが生えている状態とワラビを含めた様々な植物が生えている状態では大きな違いがあります。やはり豊かな植物相があった方が様々な利点があるため、特定の植物ばかりが増えるのは好ましくありません。

 

それは斜面の保護にも関わります。

ワラビは地下茎で増える植物ではありますが、ススキなどと比べると斜面を保護する力は弱いように思います。またシカが何度も斜面を踏み付けることで、ついに小規模な崩落が発生するまでに至りました。

こちらの場所はススキやササなどがしっかりと生えていた場所なのですが、写真でもわかる通りあまり植物が生えていません。生えていたとしてもワラビが主であり、ぽろぽろと土が落ちてくるようなこともありました。

今では縁の部分に足をつくとズルっと土が下へ落ちるような動きをすることもあり、小規模ではありますが斜面が崩れる危険性が高まっていると言えます。農作業をする上でも危ないですね。

 

そして刈った草も食べられてしまうことがあるため、茶草として利用できる草の量が減少している事にもなります。

 

伝え聞いた話

上河内地区の現在の茶畑ですが、以前は草場として管理されていた箇所もあると言われています。茅葺きの材料としたり馬などの動物に与える飼い葉として利用するための場所であったのです。

草を利用する以上、人の手によってある程度は管理されていたのは確実でしょうし、利用できるくらいの草を確保できていたので、近年のような被害はあまり無かったのではないかと推測できます。

 

そしてこれは草場だけに限った話ではありません。山の木にも当てはまります。

種が落ちて芽が出るような木は芽が出てきたタイミングで食害を受けるため大きく育つことはありません。また伐採して様々なことに利用する雑木ですが、切り株からはひこばえが伸びてくるため木々の再生も結構早く進みます。

しかし今ではひこばえも食べられてしまうため、成長できず枯れてしまう木が出てきたり、大きく枝を伸ばすことが出来なくなっているのです。

写真はある程度育っている木なので顔が届かない範囲は食害を免れていますが、下の方は人が刈りこんだように枝葉がなくなっています。つまり刈りこんだような状態となっている高さ以下の木はもれなく食害に遭うため、若い木が極めて育ちにくいのです。

ニホンジカをほとんど見ることがなかった時にはこのような被害は無かったため大きな関連があることは確実でしょう。

このままでは豊かな環境が失われてしまう危険性が極めて高いため、心苦しくはありますし無秩序な乱獲は論外ではありますが、狩猟や駆除等の行為に力を入れる必要があると思っています。